翻訳証明書への翻訳者名記載
2009年1月20日(火) 16:13 JST
翻訳サービス合同会社/翻訳会社ソリュテックでは翻訳証明書に翻訳者の個人名を記載している。
しかし、ある翻訳会社では、翻訳者個人の個人情報を保護するため、翻訳者名を記載した翻訳証明書は発行しないらしい。
私の概念では、翻訳者が自信を持って翻訳したことを翻訳証明書上に表すのが常識だったので、この方針には多少なりとも驚いた。
確かに翻訳者名は個人情報には該当するが、翻訳者名は保護対象と言えるのだろうか? そのような疑問とともに、翻訳証明書に翻訳者名を記載する必要性について考えてみることにした。
そして、最終的に、翻訳証明書には翻訳者名を記載すべきであるという私見を得た。
翻訳証明書には翻訳者名を記載すべきである理由
翻訳証明書に翻訳者名を記載しなくても良いというのは、翻訳会社が品質を保証するから、翻訳者個人まで遡る必要は無いじゃないかという理屈だと思うが、これは、信頼性の面から言えば劣る結果となる。
今、農作物などでは、個人情報の保護どころか、逆に、生産農家の顔が見える方法を導入した方が信頼性を獲られると考えられている。 トレーザビリティーを高めることが重要なのだ。
翻 訳会社というブラックボックスに入れてしまうと、最終的に誰が翻訳したかということがわからなくなる可能性がある。 そもそも、翻訳会社の翻訳者というのは、美容室の美容師さんと一緒で、翻訳会社への帰属性というのは小さい。 早い話、何か問題が起こったときに 「担当の翻訳者は退社したので翻訳会社としてはトレースできません」 ということが平気で出てくる可能性があるということだ。
確かに翻訳会社が品質管理などを行い、信頼性の向上に寄与しているとしても、そのような事は、どういう品質管理を行っているかを詳らかに公表し、実際にそれが機能していることを証明しない限り、信頼性の担保にはならない。
一 方、翻訳者は、偽名を使うか、逃亡するか、死亡するかしない限り、翻訳結果に対する責任を免れることはできない。 翻訳者が翻訳責任を持つという考え方はシンプルでクリアーだ。 つまり、翻訳物の場合、翻訳会社と翻訳者のどちらが翻訳の信頼性を左右するかと言えば、翻訳会社よりは翻訳者の方なのだ。
これは、公証な ど、実際に文書の責任を明らかにしなければならない場面で顕著に表れる。海外に提出する正式な私文書に公証を取付ることが良く求められるが、公証は翻訳者 の名前で行う分には 「私が翻訳しました」 ということで単純明快、円滑に事が運ぶが、もし、これが翻訳者の名前で行わないということになると、そうはいかない。 手間も、時間も、コストも余計にかかることになる。
ここまで、翻訳者名を伏せるということはデメリットの大きいことなのだが、果たして、翻訳者名をどこまで保護する必要があるのだろうか。
個人情報保護法によれば、個人情報の取り扱いは、各事業者が、個人情報の有用性と鑑み、事業実体に合わせて保護することになっている。 保護の内容は概ね以下のとおりである。
- 不正な手段で情報を取得しない。
- 取得した情報を目的外に利用しない。
- 取得した情報をきちんと管理する。
- 個人からの訂正要求、削除要求、開示要求に対して、適切な措置を取る。
つまり、翻訳会社が個人情報保護法に則って翻訳者名を正しく取得、利用、管理、措置を行えば、個人情報保護法に抵触することは無いと、私は判断する。
翻訳者が翻訳者名を表に出さないよう保護してくれと翻訳会社に依頼すれば、翻訳会社は、翻訳者の求めに応じて翻訳者名を表に出さないよう保護しなければならないが、翻訳者の同意を得ている限り、翻訳会社は、翻訳者名を翻訳証明書に記載できるというということになるだろう。
なので、翻訳会社が翻訳者の名前を表に出さないようにするのは、翻訳会社側の方針というか都合と言っても良い。
翻訳者名を記載した翻訳証明書を発行しないとする翻訳会社の、翻訳者の個人情報保護というのは表向きの理由付けであり、真の理由は中国在住の中国人など名前を出すと都合が悪い翻訳者が翻訳しているからなのではないだろうかと思えてくる。
先 に述べたとおり、翻訳証明書上の翻訳者名というのは翻訳の責任を明確にする上で、重要な個人情報であり有用性は十二分にある。 これを鑑みた時、翻訳者が合意している限りにおいて、翻訳者名を翻訳証明書に記載し、正々堂々と翻訳会社とともに翻訳責任を明確にすべきだろう。
個人情報保護が乱用されると、責任者が見えない、非常に気持ちの悪い社会になる。 責任者が見えない社会では偽装が横行するだろう。 それは避けたいものだ。
翻訳サービス合同会社 たぶき