突然閉鎖の日本通訳協会って
2008年11月 8日(土) 16:29 JST
翻訳会社は通訳も手がけたりするわけだが、日本通訳協会っていうのはプロの通訳の世界では蚊帳の外というか、話題にも何もならない存在だったので、日本通訳協会が閉鎖というニュースが流れても驚きも何もしなかった。 だが、何故、日本通訳協会が閉鎖に追い込まれたのかということについては関心を持っている。 表面上は日本通訳協会の言い訳 「今般の経済不況の中で金融支援も受けられず、やむなく閉鎖せざるを得なくなった」 ということなのだろうが、本当にそれだけなのだろうか? 筆者は、経済不況になろうがなるまいが、この日本通訳協会の検定は無くなる運命にあったと見ている。 その要素を箇条書きにすると以下のとおり。
・ 私企業が行う金儲けのための民間検定
- 公的な信頼性なし
- 不採算で撤退はあたりまえ
・ 検定自体が社会的評価を得られない信頼性の低いものであった
- 実用性に乏しい(通訳会社で評価対象外)
- 実力のあるライバル「通訳技能向上センター」の出現
・ 少子化+通訳者を目指す人の減少
- 受験者数の減少
そういう地合いの悪い所に持ってきて、米国から経済危機の大津波がやってきて、金融機関が精査した結果、もう、お金は貸せませんということになって事業が行き詰ったということなのではないだろうか。
当初、親会社か関連会社かが事業に失敗し、連鎖的にコケたというシナリオも考えたが、どうもそうではないようだ。 この日本通訳協会っていうのは、米国の大学などで心理学を専攻し、その後、語学コミュニュケーション教育を専門に行ってきたという向鎌治郎氏が細々と運営してしていたような小さな会社だったようで、いわば、先細りしてフェードアウトしていくような形かと考えられる。
さて、以下、先に述べた要素の補足である。
● 私企業が行う金儲けのための民間検定
そもそも、日本通訳協会というのは、法人格で言えば株式会社であるから、その活動は第一義的に 「金儲け」 を目的としていると言えるだろう。 そして、この会社の商品の中身はと言うと、各種の通訳検定試験である。
・ この通訳検定試験は、単なる一民間企業が行っているものであり、国家試験のような信頼性や権威は無い。
・ また、私企業が行う金儲けのための民間検定であるため、不採算になったら、さっさと撤退するのはあたりまえのこと。
● 検定自体が社会的評価を得られない信頼性の低いものであった
私企業が行う民間検定 なので、その価値は社会的評価に委ねられる。 つまり、社会的評価上 「そのような資格は意味が無い」と考えられるような検定試験であれば、いくら合格したところで何の意味も持たないわけだし、多くの人がレスペクトするような検定であれば、その検定なり資格には、それなりの価値があるということになる。
それで日本通訳協会が提供してきた検定に対する世間的な評価はというと、まず、私が知る限り、通訳会社でその検定試験の結果を重視しているところは無く、また、念のためインターネットでも調べてみたが、日本通訳協会の検定は多くの級で筆記試験だけであり通訳能力を測ることができるのかという疑問の声など社会的な評価は得られていないないようだ。 通訳会社が評価しないような検定結果を持っていても実用的には意味が無い。 あくまで自己満足の領域でしかないのだ。
さらに、インターネット上で公表されている早稲田大学リポジトリの中にある佐藤 あずさ氏の博士学位論文「日本通訳産業研究」(これは通訳関係者の間では有名な論文で通訳業界が良く研究されている)の中に、先輩通訳者への聞き取り調査の中で、そもそも、通訳は複雑な技能の集合体であって資格化することが不可能であるというような回答が紹介されている。
これは、逆に言えば、精度の高い検定や試験を行おうとしたら、大変な労力や資金などが必要であるということを示唆しており、日本通訳協会の検定のように4000円から1万7000円程度の検定料では、利益を出すことが前提の株式会社ではさらに原価は低いものとせざるを得ないことも加わり、信頼できるレベルの検定はそもそも不可能だったのではないかと考えられる。 ちなみに、この日本通訳協会の従業員は八人程度ということで、そういう観点からも、そうたいした検定を行えるような体制ではなかったのではないかということがうかがえる。
その他、佐藤 あずさ氏の博士学位論文「日本通訳産業研究」の中から、日本通訳協会の検定が、いかに、実際の通訳業界でマイナーなものであったかを裏付けることを発見できると思うので、この問題に関心がある方で、まだ同氏の論文をお読みでない方は、一読なさることをおすすめする。
● 少子化+通訳者を目指す人の減少に伴う 受験者数の減少
少子化については改めて述べるまでも無いだろう。 通訳者を目指す人の減少というのは、通訳というのは、もの凄く大変なことなのだが、それに見合った収益が得られないというところに元凶があるように思える。
私も有能な通訳さんを何人か見てきたが、それら通訳さんは気の遠くなるような通訳のトレーニングを積み、その上で、通訳を行う前に時間をかけて通訳対象の物事に関する事前勉強を行い、そして実際の通訳では精神をすり減らす過酷な仕事を行う。 だが、決して、通訳さんの実入りは良いとは言えない。 それよりは、外資系の企業にでも勤めて語学能力を生かした方がよっぽどマシということになってしまう。
それでは、通訳者を目指す人は減少して当然ではなかろうか。
それにしても株式会社なのに株式会社ということを隠すかの如く振舞い、わが国唯一の云々と言ったような、国家試験と勘違いさせるような運営というのは、限りなく詐欺に近いのではないか。 この問題に関しては今後も関心を持ってみていきたい。
翻訳サービス合同会社 たぶき
・ 私企業が行う金儲けのための民間検定
- 公的な信頼性なし
- 不採算で撤退はあたりまえ
・ 検定自体が社会的評価を得られない信頼性の低いものであった
- 実用性に乏しい(通訳会社で評価対象外)
- 実力のあるライバル「通訳技能向上センター」の出現
・ 少子化+通訳者を目指す人の減少
- 受験者数の減少
そういう地合いの悪い所に持ってきて、米国から経済危機の大津波がやってきて、金融機関が精査した結果、もう、お金は貸せませんということになって事業が行き詰ったということなのではないだろうか。
当初、親会社か関連会社かが事業に失敗し、連鎖的にコケたというシナリオも考えたが、どうもそうではないようだ。 この日本通訳協会っていうのは、米国の大学などで心理学を専攻し、その後、語学コミュニュケーション教育を専門に行ってきたという向鎌治郎氏が細々と運営してしていたような小さな会社だったようで、いわば、先細りしてフェードアウトしていくような形かと考えられる。
さて、以下、先に述べた要素の補足である。
● 私企業が行う金儲けのための民間検定
そもそも、日本通訳協会というのは、法人格で言えば株式会社であるから、その活動は第一義的に 「金儲け」 を目的としていると言えるだろう。 そして、この会社の商品の中身はと言うと、各種の通訳検定試験である。
・ この通訳検定試験は、単なる一民間企業が行っているものであり、国家試験のような信頼性や権威は無い。
・ また、私企業が行う金儲けのための民間検定であるため、不採算になったら、さっさと撤退するのはあたりまえのこと。
● 検定自体が社会的評価を得られない信頼性の低いものであった
私企業が行う民間検定 なので、その価値は社会的評価に委ねられる。 つまり、社会的評価上 「そのような資格は意味が無い」と考えられるような検定試験であれば、いくら合格したところで何の意味も持たないわけだし、多くの人がレスペクトするような検定であれば、その検定なり資格には、それなりの価値があるということになる。
それで日本通訳協会が提供してきた検定に対する世間的な評価はというと、まず、私が知る限り、通訳会社でその検定試験の結果を重視しているところは無く、また、念のためインターネットでも調べてみたが、日本通訳協会の検定は多くの級で筆記試験だけであり通訳能力を測ることができるのかという疑問の声など社会的な評価は得られていないないようだ。 通訳会社が評価しないような検定結果を持っていても実用的には意味が無い。 あくまで自己満足の領域でしかないのだ。
さらに、インターネット上で公表されている早稲田大学リポジトリの中にある佐藤 あずさ氏の博士学位論文「日本通訳産業研究」(これは通訳関係者の間では有名な論文で通訳業界が良く研究されている)の中に、先輩通訳者への聞き取り調査の中で、そもそも、通訳は複雑な技能の集合体であって資格化することが不可能であるというような回答が紹介されている。
これは、逆に言えば、精度の高い検定や試験を行おうとしたら、大変な労力や資金などが必要であるということを示唆しており、日本通訳協会の検定のように4000円から1万7000円程度の検定料では、利益を出すことが前提の株式会社ではさらに原価は低いものとせざるを得ないことも加わり、信頼できるレベルの検定はそもそも不可能だったのではないかと考えられる。 ちなみに、この日本通訳協会の従業員は八人程度ということで、そういう観点からも、そうたいした検定を行えるような体制ではなかったのではないかということがうかがえる。
その他、佐藤 あずさ氏の博士学位論文「日本通訳産業研究」の中から、日本通訳協会の検定が、いかに、実際の通訳業界でマイナーなものであったかを裏付けることを発見できると思うので、この問題に関心がある方で、まだ同氏の論文をお読みでない方は、一読なさることをおすすめする。
● 少子化+通訳者を目指す人の減少に伴う 受験者数の減少
少子化については改めて述べるまでも無いだろう。 通訳者を目指す人の減少というのは、通訳というのは、もの凄く大変なことなのだが、それに見合った収益が得られないというところに元凶があるように思える。
私も有能な通訳さんを何人か見てきたが、それら通訳さんは気の遠くなるような通訳のトレーニングを積み、その上で、通訳を行う前に時間をかけて通訳対象の物事に関する事前勉強を行い、そして実際の通訳では精神をすり減らす過酷な仕事を行う。 だが、決して、通訳さんの実入りは良いとは言えない。 それよりは、外資系の企業にでも勤めて語学能力を生かした方がよっぽどマシということになってしまう。
それでは、通訳者を目指す人は減少して当然ではなかろうか。
それにしても株式会社なのに株式会社ということを隠すかの如く振舞い、わが国唯一の云々と言ったような、国家試験と勘違いさせるような運営というのは、限りなく詐欺に近いのではないか。 この問題に関しては今後も関心を持ってみていきたい。
翻訳サービス合同会社 たぶき